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自治体職員の夢と希望
自治体職員意識調査の結果を踏まえて

尹誠國 PLP会館 大阪地方自治研究センター 研究員

 2012年12月から2013年3月にかけて、自治労大阪府本部結成60周年を記念し、大阪府内の自治体職員(大阪市を除く)を対象にした意識調査が行われた。

 本意識調査において、自治体職員の置かれた非常に厳しい状況が端的に表れている。

 まず、正規・非正規職員を問わず、76.5%の回答者が、10年前に比べ仕事上のストレスやプレッシャーが「増えた」と回答している。その主な理由は、業務量と責任の増加が最も多い。これは、集中改革プランなどによる人員削減の影響が如実に表れた結果と言える。また、住民のニーズが多様化する中での住民への対応がそれに続いている。

 次に、生活上の不安や課題については、第一に、子どもの進路や将来、第二に、自分の健康状態や気力・体力の衰え、第三に、親や配偶者の世話、第四に、貯蓄の不足や老後の生活設計などとなっており、この構成割合は各種世論調査や20年前の意識調査結果(21世紀未来図調査)とあまり変わらない。しかしながら、雇用の継続や勤務形態の変更、異動や配置転換など雇用に関わる不安が高まっている。

 そして、自治体職員は給料が高すぎる、自治体職員は働いていないなどの自治体職員批判については、「まっとうな批判だと思う」2.9%、「批判されても仕方がない部分も多少あると思う」50.6%、「不当な批判だと思う」42.6%という結果だった。

 また、大阪においては、周知のように大阪市の消滅につながりかねない「大阪都構想」と言う名の狂風が吹き荒れている。そして、必ずしも大阪だけに限られたことではないが、地方自治体の行財政状況は悪化の一途をたどっている。自治体や自治体職員の置かれた、このような厳しい状況が近い将来に改善されるとは期待できそうにない。

 しかしながら、このような厳しい状況にもかかわらず、今回の意識調査では、頑張っている自治体職員の姿を確認できた。以下、それに関連する意識調査結果を紹介する。

イラスト まず、勤続10年を経過して、3分の2近くの回答者が、就職した当時に比べ、より一層「やりがいをもって働いている」と回答している。この高いモチベーションをいかに維持し高めていくのかが問われている。特に、非正規職員で「そう思う」と積極的な回答をした人が正規職員に比べて15%も高いと言う結果は、均等待遇の実現や転換制度の導入など人事管理上の課題の解決が重要であることを示している。また、「やりがい」をもって働き続けることができる理由の一番に「職員間の連携やコミュニケーション」と回答していることからも、全体として、職場で円満な人間関係を築き、コミュニケーションをとっているとの回答となっていると考えられる。

 次に、職場での情報共有やコミュニケーション、チームワークを問う設問で、「そう思う」、「どちらかと言えばそう思う」を合わせて、68.3%の回答者が業務を通じて得られた経験と教訓をみんなで共有できていると回答している。ここからチームワークで日常の業務を円滑に遂行している職場実態が浮かびあがる。

 そして、自治体の信頼を高めるため、今必要なこと、改善したほうが良いと思うことは、「利用する市民の目でサービスを見直す」23.1%、「それぞれの持ち場でお役所仕事やマンネリの気風を変えていく」17.9%、「職員の専門性や技能・知識水準を格段に高める」13.4%、「地域にとってこれから大切になる課題に力を入れる」12.5%である。

 自主的な業務の改善について「自ら声をかけて一緒に取り組む」19.2%、「声をかけられれば協力する」66.9%となっており、合計で86.1%の回答者が仕事や業務改善の必要性を認識し、自主的に取り組むと非常に高い意欲を表している。この結果から職場風土としては、自主的な業務改善が定着しつつあることを示している。このような職場風土をベースにした管理職のリーダーシップが求められていると言える。

 また、職場内での「連携や助け合い」が10年前と比べて、「変わらない」が32%、「かなり増加した」、「少し増加した」を併せて30%、「少し減少した」「かなり減少した」が34%となっている。人員削減やIT化によって、職場の人間関係が希薄化し、協力や助け合いが減少傾向にある中、「連携や助け合い」が増加しているという回答は、注目に値する。職場環境が厳しくなる中、職員の協力によって業務の増大に対応し、業務へのモチベーションを高めている現状が伺える。これらの結果から、トータルとして、自治体職員は厳しい状況の中でも仕事と仲間を大事にし、普段の仕事に励んでいると言えよう。

「地域を良くしたい」「市民を幸せにしたい」という思い

  先日、筆者の近所に住む自治体職員から言われた。「大変としか言いようがないですね…」と。これが今の多くの自治体職員の正直な気持ちかもしれない。また、「自分だけ頑張っても、周りが付いてきてくれなければ、自分ばかりが損な役回りになってしまう。場合によっては、改善を提言すればするほど職場で浮いてしまったり、周りから迷惑がられたりすることもある。孤立するのはつらい」と言う声があるのも事実であろう。しかしながら、基本的に、自治体職員をはじめとする公務労働者というのは、「地域を良くしたい」とか「市民を幸せにしたい」という思いでその職に就いた人たちであると思う。そして、前述のように、約4割の回答者は自治体職員に対する批判は不当なものであると思っている。市民による批判・バッシングの中には、どう考えても不合理としか言いようのない理不尽なものも確かにある。しかしながら、他方で、ごく一部であろうが、批判を受けても仕方のない自治体職員の働き方が存在してきたのも事実ではないかと思われる。ごく一部であると言っても、マンネリになり、「与えられた仕事をこなす」と言う働き方を続けては、市民はもとより自治体職員自身も不幸なままである。どうにかこの悪い流れを断ち切り、みんなが幸せになれるような働き方を実現できないものであろうか。

 厳しい時代であるからこそ「地域を良くしたい」とか「市民を幸せにしたい」と言う初心を取り戻し、「労働条件の改善」や「仲間づくり」を通じて、自らの思いを実現できるような職場環境を自ら創っていく努力が求められている。もっと市民との距離を縮め、市民との信頼関係を構築したり、いろいろな専門家や実践家と知り合ったりすることで、職場の外側にも「つながり」を広げて行く必要がある。それこそが市民を幸せにし、職員自身も幸せになれる働き方を実現するための近道であると考えられる。

 明日は明日の日が昇る。そして、住民の誰かが市役所を訪れる。訪れる理由は様々であろう。住民票を取りに、児童手当の相談に、子どもを保育所に入れたい、介護保険を使いたい…など、中には、自分は困っているのに市役所はしゃくし定規で何にもしてくれないと文句をつけに来る人もいるであろう。皆住民である。それに対応するのはほかならぬ自治体職員である。そして、住民がいなければ自治体や自治体職員は存在できない。

 疾風に勁草を知ると言う。厳しい状況であるからこそ、自治体職員にはより一層高い期待が寄せられている。2014年は午年である。馬が飛び上がるような勢いで自治体と地域を元気づける1年にしたい。その主役こそ自治体職員である。

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