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2015/4/21 火曜日

誰もが働ける社会/生きていける社会を築く―自治体と地域の取り組み―

Filed under: オピニオン — 編集部 @ 12:28:43

櫻井 純理 立命館大学産業社会学部教授

7月1日、自治研センター総会で櫻井先生から記念講演をしていただきました。以下、自治研センターで作成した要約となっています。

この数年間、豊中市の就労支援政策の調査をする過程で就労支援は基礎自治体が提供するにふさわしい公共サービスだと考え、今日のテーマとしました。

豊中市で行われている就労支援活動は、なかなか働けない人や仕事がみつからない人への支援(労働市場における供給面への働きかけ) だけでなく、働ける場をつくりだすということ(需要面への働きかけ)も含んでいることが特徴的です。求職者に対する職業訓練とか働く手前の生活支援や就労 準備など人に対する投資を行う一方で、地域の中にそういう人が働ける場をどうやって増やしていくかというのも非常に大事なのです。この両方をうまく組み合 わせながら就労困難者や生活困窮者をサポートしていく、これが就労支援ということになります。また、就労支援では「就職」のみならず「定着」の支援もして 働き続けられることを目標としています。このことは非常に大事です。仕事の経験が少ない人とか、長い間引きこもっていた人、どんな仕事をしても続かなかっ た人を、「うまくいくと思います」と紹介しても、その後長く働いてもらえるのかと受け入れ側の企業は不安に思います。そのためにも定着のための支援は重要 なのです。

豊中市での具体的な支援内容としては、2003年度に始めた地域就労支援事業を核にしながら多様な支援を展開してきました。 2006年度には無料職業紹介所を開設しました。地域就労支援センターが相談の受付場所になり、ここで受けた相談を無料職業紹介所に登録されている企業の 求人などと結びつけながら、就労その他の活動に導いていくという枠組みを作ったのです。ひきこもりがちだった人が外に出て地域の活動に参加したり、地域内 の協力事業所で短期間の就労を経験したりしながら、無料職業紹介所などが開拓をしてきた求人企業とマッチングをしていく、こういうスキームをつくって実践 してきました。豊中市の特徴は、訓練的就労の機会として緊急雇用創出基金事業を積極的に活用したことです。また、クリーニング会社や物流会社、製造業など いろいろな民間企業が就労困難者を最終的に受け入れて、雇用に到った例がたくさんあります。

その後、パーソナル・サポートサービス事業というものが2010年に始まりました。これは全国の自治体で手をあげたところに国がお 金を出して、モデル事業として始めたのですが、豊中市もそこに手をあげて2年間実施しました。それまでの就労支援事業ではなかなか就職できなかった、就労 阻害要因が複雑・深刻で個別的・継続的な支援が必要なケースについて、この新しい就労支援の枠組みで取り組み始めたのです。この事業は今年度から「生活困 窮者自立促進支援事業」に引き継がれています。豊中市は、今までの地域就労支援センターでもパーソナル・サポートサービスを始めていましたが、それだけで はなく、新たに豊中市パーソナル・サポートセンター(TPS)を立ち上げて、主に若者支援に重点を置いて集中的に支援する仕組みを作りました。地域就労支 援センターに来た相談者の就労阻害要因を計数化して、特に就労が難しいケースを新しく作ったTPSで対応することにしたのです。さらに、テレビドラマや報 道で大きく取り上げられた豊中市社協でも、CSW(コミュニティ・ソーシャルワーカー)をベースとした地域福祉のネットワークを活かしたパーソナル・サ ポート事業を実施しました。このように、豊中市では新設のTPSも加えた地域就労系の支援と、市社協の地域福祉系の支援という大きく二つの流れでパーソナ ル・サポートサービスが行われました。

豊中市の施策のどこが新しいかというと3点にまとめられると思います。1点目は、地域就労支援事業という同和地域への支援政策とし て導入された大阪府の事業を、一般的な労働政策として本格的に展開したということです。2点目は、無料職業紹介所を自ら作って、地域で求人企業の開拓活動 までやったことです。就労困難者への支援を主目的とした自治体無料職業紹介所は全国でも珍しい存在です。地域就労支援センターでていねいに相談にのって、 どういう人がどういうことに困っていて、どんな仕事ならできそうかということを、個別の求職者を頭において、地域の企業をまわることができるのです。無料 職業紹介と地域就労支援センターは普段から密接に仕事をしていますから、今どういう人が登録をしていて、この間紹介した就労先ではどういうところが評価さ れたけれども何がうまくいかなかったのか、というようなことが全部頭に入っているわけです。ですから、今度はこういう職場・仕事ならうまくいくかもしれな いから紹介してみようというふうに、それぞれの団体のコーディネーターが常にミーティングをしながら、その人にあった勤め先を見つけていくようにしている のです。つまりそれぞれの困難要因に一つひとつていねいに対応しているのです。3点目の特徴は、国・府の助成金を効果的に活用したことです。かなり多くの 緊急雇用事業を新たな(一時的)雇用の場として設けてきました。これに対しては、国の助成金が途絶えた時にどうするのか、結局また仕事を失ってしまうので はないかという批判的な見方もあるだろうと思います。ただ、どういう仕事や職場が就労困難な人の就労先としてうまくいくのか、こうした就労経験をしっかり ふり返ってこれからにつなげていくことが大事だと思っています。

豊中市の地域就労支援事業は、最初は、大阪府が補助金を半分出して各市町村が半分お金を出す、という形で始まったものでした。しか し、2008年に大阪府の橋下知事(当時)が、関連4事業を統合した交付金事業に変更しました。統合された4事業の中のどれだけを地域就労事業にあてるか ということは、交付金を受けた各市町村次第になるわけです。豊中市の場合は、一般財源の予算も少しずつ増やしながら、交付金事業になってからもこの事業を 継続・拡大してきましたし、事業の実績も増加しました。特に2006年度の途中に無料職業紹介所を開設し、2007年度の相談件数は前年の246件から 445件に増加しました。また、2010年度の相談件数631件が2011年度には892件と大幅に増加しています。これは、福祉事務所がセーフティネッ ト補助金を厚生労働省から受けて、主管する生活保護受給者向けの就労支援事業を地域就労支援センターと連携して行うようになったからです。就職率も 2011年で41.3%と、様々な問題を抱えた人が多いにもかかわらず高い数字になっています。

最後に今後の政策に関する示唆について指摘したいと思います。生活困窮者を対象とする自立促進支援事業が来年度から全国の福祉事務 所設置自治体に拡がっていきます。その際には、行政内部の部門間連携がいっそう重要になるでしょう。就労支援というのは、福祉部門と労働部門の連携はもと より、教育や保健医療など自治体のいろんな部門が協力し、つながって実施するほうが効果的です。地域の中で仕事が見つからない、なかなか経済的に自立でき ない人がどこに埋もれていてどういう困難を抱えているのかということを、行政内部の様々な部門がアンテナを張って発見していくことが重要です。また、就労 支援の「出口」は雇用(企業)だけではなく、教育や職業訓練、福祉的支援など多様です。地域の資源を開拓・活用した就労支援の仕組みを作る時には、庁内の 横の連携をどうするのかが非常に重要になることを申し上げて終わらせていただきます。

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